ほっかブログ

カテゴリー「小話」

2015年、パラダイムシフト。

かつて、富の尺度はお金であった。
2015年、「幸福度測定器」が出るまでは。

2012年、人類は、幸福感を感じたときに脳内に発生する物質の測定に成功した。
そして、驚くべきことに、幸福物質が多いほど病気になりにくく、健康であるという実験結果も出た。

それまでにも、笑うことが健康にいいと言われてきたが、それが科学的・医学的に証明されたのだ。

幸福度は必ずしも財産には比例しない。
むしろ、財産と幸福度の関係性は無いかのように見えた。
あるいは、お金持ちのほうが幸福度が低い場合も多く見られた。

「なぜあんなみすぼらしい男より、私のほうが幸福度が低いのだ!」
憤るほどに幸福度は下がっていく。

ある宗教化は、宗教が科学的に証明されたと騒いだ。
鬼の首を取ったように騒ぐ宗教家を見て、不快感を感じた人の幸福度は下がった。

人々は、幸福度をあげることを目指すようになった。

お金というものについて考えるようになった。
そして、いかに無意味なものに執着していたかに気づいた。

これまでの尺度であるお金に対して、幸福度には決定的な違いがあった。 
お金は、一部の人が大量に所有することができる。奪うことができる。
幸福度は、誰もが上げることができるし、誰かの幸福度を奪って自分のものにはできない。

理解できない人間も多くいたが、適応するか、無視を続けた。

「お金があれば幸せだ」
「お金がなければ不幸だ」

そう考えている人たちは、しばらくは実際にそうであった。
お金を持っていれば幸福度はあがり、少なければ幸福度は下がる。
それは、資産依存幸福症候群と呼ばれ、時代が進むつれて次第に少なくなっていった。

 

そして2032年現在。

ジェーン1

キャシーたちは、いかにジェーンがだめかと言うことを訴えてきた。

メモを取らない、挨拶をしない、同じ過ちを繰り返す。

キャシーたちは、新人の頃、家に帰ったらできなかったことを勉強してきた。
ジェーンの同期の子たちもそうしている。

ある日、ジェーンになぜ勉強してこないかを聞いたとき、キャシーは言葉を失った。

「家に帰って食事や洗濯をしていたら眠くなったので、寝てしまいました」

キャシーたちは、リーダーに何度も訴えたが、リーダーは「もう少し見てあげて」というばかりだ。

あげく、お偉いさんたちには「なぜあの子に当番をさせないんだ。しっかり教えているのか」とまで言われる。

当番とは、ある程度できるようになったらまかせられる数人によるシフトで、通常は半年ほどで当番をするようになるが、とてもじゃないが、ジェーンに当番はさせられない。

キャシーたちはそう思っていたし、他の当番メンバーの負担になることは目に見えている。

しかし、このままずっと当番をさせないわけにもいかない。

ある日、このままではいけないと、リーダーがジェーンに話を聞くと、また耳を疑うようなことを言っていた。

まず、これまでの自分は80点くらいであるということ。
当番ができないのではなく、させてもらえてないだけだということ。

つまり、ジェーンは自分はできると思っているのだ。

ミイラ取りがサンタになる

ちょっと肌寒い、秋の遠足。

アツシの吐く息は白く、体の中は温かいが、風が手足を冷たくする。

やっと山の休憩所につくと、小さな湖があり、何人かの同級生が湖に手を入れている。

「あったか~い」

「ね、あったか~い」

見たところ、温かくなさそうだ。

「え~うそ~!」

優子はそう言いながらも湖に手をいれた。

 

「ほんとだ、あったか~い」

え? ほんとに温かいのか?

「ね、アツシくんもおいでよー」

「あったかいわけないだろ!」

アツシは疑いながらも、その湖に手を入れた。

 

 

……冷たい!

一瞬体がビクっとなるほどの冷たさだった。

だまされた!

 

そしてアツシは、水に手を入れたまま、それを見ていたナオキにこう言った。

 

「おい、あったかいぞ!」


サンタクロースも、似ている。